鍵かけたっけ?が口癖の母

わたしの母は、自分は最近物忘れがひどくなったと言います。確かにちょっと前に話した内容を何度も聞き返してきたりしますから、そのたびごとに「それさっき言ったでしょう」とか言われていれば、自分は物忘れがひどくなってきたと感じるのでしょう。
実は本人は歳のせいだと言いますが、わたしはそうは思っていません。なぜならわたしの母の物忘れに関して言えば、最近はじまったことではないのです。わたしが子どもの頃からずっとそんな感じだったのです。

四人も子どもがいた母は、その世話だけで大変な忙しさだったはずです。子どもたちに手がかからなくなっていくころ、やっと母も一息つけたのではないでしょうか。まさに目の回るような忙しさが一段落すれば、だれだって緊張の糸がゆるむはずですから、そのころから母の物忘れがはじまったとしても不思議ではありません。もちろん仮定の話ですが、今もしも母が手のかかる子どもを四人くらい抱える事態になったとしたら、きっと記憶力をふくむあらゆる能力がレベルアップするのではないかとわたしは思うのです。

ちなみに最近の母の口癖は「鍵かけたっけ?」です。その前は「ガスの元栓しめたっけ?」でした。それだけいろんなことが気になっているのだから、母の頭はまだまだ元気だと思います。本人は歳のせいで自分の記憶力が衰えていると思っているようでうが、そもそも子どもが自立し始めたころからずっと、そんなに記憶力の良い母ではありませんでしたから問題ないはずです。もっとも私が生まれたばかりのころのことなど、大昔のことはよく覚えているのですから、記憶力だってそんなに悪くないのかもしれません。
母は最近メモをよく取るようになりました。そうしないとすぐに忘れてしまうからだそうですが、記憶力の良い人は、忘れないように工夫するのが上手い人だと聞いたことがあります。そういう意味でも、やっぱり母は記憶力が悪いわけではないと思うのです。

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